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![]() 第7回きらめき子育て賞 体験記部門 入賞作品10編 1. 親子の成長 影土井 洋治 金生 剛昌 紀村 修一 4. 障がい児の子育て 鴻野 享子 5. 「娘達の親育て」 笹川 めぐみ 6. ありがとう 清木 香奈枝 東山 敏忠 8. 恐怖のおむつ替え 中原 雄 9. 「愛情300%」 古屋 陽子 10. 仕事も好きだし、家庭も大事 横山 勝子 ※掲載は作者名五十音順
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恐怖のおむつ替え
「ギャー」と太い叫び声が聞こえる。相槌を打つかのように「ギャー」と可愛らしい叫び声が聞こえる。最近ではすっかり慣れてしまったおむつ替えも大人顔負けの塊を見るとついつい声に出てしまう。それが面白いのかちーちゃんは満面の笑みを見せる。これが我が家の日課である。
ちーちゃんが生まれた直後に、抱っこしてはじめて父親になれた気がした。そして、はじめて妻との共同作業でおむつを替えた時に親になれたと思う。おしりふきを片手に、股関節が悪くならないようにとそろりと足を持ち、おしりがかぶれないようになでるが如く優しくきれいに。おむつ替えはたいそう気を使うものである。しかも我が家は妻の方針で原則「布おむつ」である。「紙おむつ」のような吸収作用抜群な機能は付いていない。ゆえに、必然的に頻繁におむつを替えなければならない。 当初は悪戦苦闘しながら行なっていたおむつ替えも慣れてくれば余裕綽々だ。シーシーは言うまでもなく、半固形半液体のウンチが手に付いたってへっちゃらだし、替えたばかりなのに、ブリブリブリと音をたててウンチをしても何のそので、すぐにきれいに仕上げることができるようになっていた。 ところが離乳食を始めたときからそれは恐怖に変わる。すさまじき匂いと着色豊かな柔らかいホヤホヤした立派な固形物が目の前にある。加えて足の動きが活発だ。再び悪戦苦闘の日々に戻る。それでもおむつ替えは止められない。汚れたものを替えるのは当然のことながら、この作業だけは妻に勝てると信じているからだ。私はちーちゃんのことを目に入れても痛くないと公言している。無論、妻もそうだが、ちーちゃんから愛される度合で私は絶対に妻に勝てない。一日中ちーちゃんと向き合い、おっぱいという最強の飲み物を持っているからだ。したがって、それ以外にちーちゃんを振り向かせることを見つけなければならない。まだ寝返りを打てない時期でも、離乳食を始めてからの時期でも、それはおむつ替えの他になかったわけである。 断乳してからというもの、モリモリと食べるようになったちーちゃんはその分モリっと出す。ウ〜ンと言いながら真っ赤な顔をして踏ん張っている。すっきりした後はどうしてか、シーシーと言う。シーシーであることを強く願うが、おしりを嗅いでみると強烈な香りが鼻の奥まで刺激する。おむつカバーを開いてみるとこんもりしたものが見事にできあがり、「ギャー」という叫び声が連呼され、我が家を笑顔で包むのである。 今日もちーちゃんはウ〜ンと言って、一人たたずみ頑張っている。その横で私はおむつを片手に、恐怖とともに身構えているのである。 |