「本がくれた勇気」
萩市立田万川中学校 2年 波田 歩実
私は、友達に恵まれていると思います。みんないい人ばかりで、私のことを認め、いつも背中を押してくれます。それなのに、私は時折、友達にどう思われているのか不安になることがあります。私は、自分から行動するより、誰かについていくほうです。だから、友達と一緒にいて楽しく感じる一方で、「無理して私を引っ張らせているのではないか」と考えすぎてしまうのです。
そんな私の考えは、一冊の本との出会いを通して変わりました。それは、『成瀬は天下を取りにいく』という本です。主人公の成瀬あかりは、自分がやりたいと思ったことや興味をもったことは何でもやります。その結果、とにかく目立つのですが、本人は何も気にしていません。成瀬は、他人からの評価よりも自分の意志を大切に、まっすぐに突き進んでいきます。
そのような成瀬の姿から、もしかしたら私は、「ふつう」という言葉に囚われていたのかもしれないと気付かされました。人と違うことや目立つことを恐れ、自分で殻を作っていたのです。「自分がどうしたいか」よりも、「相手にどう思われているか」を気にして、勝手に不安になっていたのかもしれません。私は、じっくりと時間をかけて、本のページをめくりながら、自分の心に問いかけ、自分と向き合いました。そして、「自分らしくあればいい」という私なりの答えを見つけることができました。
私は、本からもらった気付きや思いを友達に伝えるために、ビブリオバトルに挑戦することにしました。それまでは、人前で話すことに苦手意識がありましたが、主人公のことを多くの人に知ってほしいという気持ちで、思い切って行動することにしました。すると、人に思いを伝えることは、心から楽しいと実感することができました。
以前の私なら、楽しいよりも先に難しいと思うはずだったのに、話す間中、わくわくした思いがとまらず、話し終えた後は達成感で満ちていました。友達からも、「楽しそうに発表していたよ。」「その本を読んでみたい。」という嬉しい言葉をもらうことができました。それは同時に、本には人の心を動かす力と、人と人をつなぐ力があるのだと実感した瞬間でした。
私たち人間は、文字や言葉なしに生活することはできません。その中で、多くの人がSNSなどを通じて、いち早く情報を得ようとする時代です。AIに質問を投げかければ、すぐに対応し、その人の好みに合うよう回答も変化していきます。早く知るという点では、このうえなく便利な道具だと言えます。
でも、本には本だけの力があります。自分に自信がなかったり、不安な気持ちを抱えていたりする人に、ヒントをくれます。どんな人も受け入れて、それでいて、人によって内容を変えたりはしません。簡単に教えてくれないからこそ、立ち止まって、自分だけの答えを探そうとする時間が生まれます。そこに、読書の意味があるのではないでしょうか。
私は、デジタル化の進む社会だからこそ、本を読む時間を大切にしたいと思っています。私に勇気をくれた一冊があったように、読書は人を支え、自分らしく生きる力を与えてくれます。だから私は、これからも本の力を信じていこうと思います。