『言葉が伝えた心の支え』
周南市立富田中学校 2年 田邊 優衣
あなたが「心の支え」と聞いて最初に思い浮かべるのは何ですか。自分の心の支えのことですか、誰かの心の支えのことですか、それ以外のことですか。人によって心にぴったりと当てはまるものは違いますが、私が最初に思い浮かぶのは私自身の心の支えである、親友です。
「全部、受け入れるよ。」
これは彼女が放った言葉の中で一番印象に残り、一番嬉しかった言葉です。
私と親友の出会いは、小学4年生のとき、彼女が転校生として同じクラスに転入したことでした。このときから親友の歯車が動き始めました。気づいたら仲良くなって、気づいたら親友と呼び合って、気づいたら心の支えとなっていました。そんな「気づいたら」の連発が友情を深めていきました。
私たちはみんなをまとめたり、リーダーに選ばれたりすることが多く、そのような部分でも協力することが多かったです。中学生になってからも同じ部活動に所属し、ずっと変わらない関係です。同級生だけではなく、先生方、両親も公認の仲良しコンビです。
ここまで聞くと何事も順調に進んでいるように感じられると思います。ですが、立ち止まっていることばかりです。
「止まれ」のサインを出しているのは私の吃音症です。吃音症とは言葉を繰り返したり、伸ばしたり、出づらくなってしまう症状が現れることをいいます。治療法は確立されていません。私の場合、あ行が言いにくくなることが多く、挨拶ができなかったり、話すときに最初の一音が出なかったりします。また、親友の名前もあ行から始まり、親友の名前でさえ言えないこともあります。すごく素敵な名前なのに…。名前を呼べないことはかなり辛いことです。明るい話だったのに、私のせいで気を使わせてしまうこと、話したいことが伝えられないこと。本当に嫌でした。
吃音をもつ人は日本では約120万人100人に1人が吃音により少しでも苦に感じたことがあるということです。また、言葉の出やすさには波があります。言葉が出にくいときは「どうやったら読みやすいか」を工夫しています。しかし、原稿を睨みつけながら音が出ずに息だけが吐き出されます。声になるはずの音と文字が分裂して喉に張りつく感覚があります。「吃音だから」といって諦めてきたことが今までたくさんありました。
ですが、今は音と文字が分裂しようとも、張りつこうともやりたいと思ったことに挑戦するように心がけています。なぜなら「全てを受け入れる」と言ってくれる親友がいるからです。言えなくても、後でめいいっぱい話を聞いてもらおう。上手くいってもたくさん話そう。こう思えているからです。本人に聞いてみると、言葉が詰まったときは「ゆっくりでいいよ」と「頑張れ」と思ってくれているそうです。「やっぱり」と思いました。やっぱり私の親友は受け入れてくれている。受け入れてくれているからこう思えるのだ、と。だから、親友とは楽に話すことができています。立ち止まりながら、それを糧として私たちは少しずつ前に進んでいるのです。
私が伝えたいことは、「心の支え」は自分らしさを与えてくれるもの、一緒に歩んでくれるものだということです。私は吃音を通して気づくことができましたが、きっと、吃音がなくても同じことを思っているはずです。出会えたから、私は気づくことができ、挑戦もできています。彼女も違う形で同じように思ってくれているそうなので、「お互いが心の支え」なのです。「支え」があるからこそ、「自立」が輝くと思っています。
あなたが「心の支え」と聞いて最初に思い浮かべるのは何ですか。